FILE 01-03 痛んだ髪には・・・
- ちょー髪な人のコト 其の弐 -
さて、続いてK場兄ちゃんの話、第二弾である。
日野氏、最大の事件はとある冬の日の昼休みのことである。
師匠兄さんズと管理人はいつものように図書館のカウンター脇でアヤしい会話に盛り上がっていた。その日のテーマは「SF映画におけるワープ航法」。
管理人が質問し、スポック兄ちゃんが解説し、まさみちゃんが突っ込みを入れ、おっさんが横で聞いているという王道パターンである。
こーゆーとき、K場兄ちゃんは会話にまざるということもなく、たいていぼーっとしていることが多いのだが、今思えば落ち着かなさげでその日に限ってやけにあぐれっしぶな行動を見せていた。
さて、昼時間といえば、大急ぎでご飯を食べ、続く掃除の時間にいたる僅か2〜30分間である。
この間に、通常、我々は図書の返却をし(図書委員経験者なので、自分の分はほぼ自力返却する。待ってるとトロいので司書公認である)、新刊の棚を浚い、既刊本を山と積み上げて貸し出し作業にいそしむのである。
その日、たまたま、日野氏は残り時間僅かになってステージに登場した。
「うにゃーっっ 遅くなったよぅぅ」
トレードマークのぶっとい三つ編みをぶんぶん振り回しながら、まさしく【妖怪猫ペンギン】(命名兄さんズ)が猛然とカウンターへ向かう。
猫のような体さばきにペンギンのごとき足捌きがぐぅである。
瞬く間にカウンターに目的のブツ(貸出図書)を積み上げる日野氏。
彼女はうっきうきと貸し出しカードを書きまくっていた。大量の本を一気に返却し、好みの新着図書を強奪……総浚えし、そりゃあもうほっくほく状態だった。
そして、ふいにK場兄ちゃんがアクションを起こす。
「やっぱ、気になるわ。うん、注意しなくちゃ駄目だ」
兄さん、すたすたと(しかし、気配を消しつつ)日野氏の背後にまわる。
そこで、我々もつい会話をとめて観察を始めた。
当然、我々としても、めったにない動きに興味津々だった。
何かが起こるなら、見逃すのはアホである。
そしてその頃。ヤツはターゲットの背後に確実に忍び寄っていた。
幸いなことにターゲットは極端に視野が狭く、周囲のくくくっと云う笑いや背後の気配にもまるで気づかない。相当にカード記入に没頭しているようだ。もはや自分の世界にトリップと云っても過言ではない。
そしてヤツは、縄のような一つ括りの三つ編みをぐいっと引っ張った。無造作に。
誰だいったい、何おするか無礼者!?
まさに、文句を云おうと髪の毛を抑えて振り返った日野氏の鼻先、機先を制して兄ちゃんの声が飛ぶ。
「日野! お前、髪痛んでるぞ」
人も少なげな図書館に、それは朗々と響きわたる。
「…………………はぁ?!」
突然の攻撃に戸惑う日野氏を我々ギャラリーは固唾を飲んで見守る。
「駄目だろ! いつも云ってるじゃないか!!」
何故に髪の毛を引っ張られた挙げ句、小言何ぞを喰らっているのか。突発事項に付いていけずにほへっと見守る対象の、ついでに何だ何だと見守る野次馬の面前で。
K場兄はご自慢の髪の毛を掻き上げた。さらぁぁぁああぁっ。手の甲で跳ね上げられたうなじ辺りの毛が背中に流れる!
「しゃんぷーは」
日野氏完全に及び腰。どうも位置が彼にとってはカメラ位置らしく、カメラ目線と呼ばれる流し目が炸裂する。!
「ラックススーパーリッチだって」
爆笑。爆笑の嵐。
ここで、飛びのいた日野氏が勢い余ってカウンター上のカセット文庫に激突したって、それは誰も責められない。もちろん、我々が腹を抱えて笑い転げてるのも、右に同じくだ。
しかし、兄ちゃんここでさらに追い討ちをかける。
「だいたいこの太さ、トリートメントが足りないんだよ。(断言)
ちゃんとやってる!?」
日野氏の髪の毛は太くて丈夫。おまけに縫い物でもデキそうな長さだが、素人目にもどう考えたってリンスやトリートメントでどうなるような代物では断じてない。
「女の子たるもの、リンスやトリートメントは当然だろ!? 髪は女の命なんだから」
日野氏、女の面目丸つぶれである。
すでに半硬直状態。石化・ストップ・スロウ状態。万能薬の持ち合わせは誰もなかった。
一方、K場兄ちゃんは言いたいことを言ってすっきりした様子で、予鈴がなり始める中すたすたと教室へ戻っていった。
恐るべしK場兄ちゃん。攻撃力∞ってカンジ?
さすがの日野氏もこの攻撃からの復活にはいささか時間がかかったようだった。。
その後、日野氏のいないところで、我々は「ラックススーパーリッチ」ごっこで遊んだものだが、今となっては懐かしい思い出である。