| 星空の下、きみと二人 |
| 地平線まで広がる砂の上には、漆黒の絹に銀の粒をちらばめたような星空が広がっている 次の町へ向かういつもの旅路の途中、一休みにとバイクを止めたその時のことだった。 吸いこまれそうな夜空の下、砂だらけになるのも気にせずヴァッシュはその体を砂地へ投げ出した。 「綺麗な星空だね〜、ウルフウッド……」 「そやな。こうやってお星様見るんも久々な気ィするわ」 横で星空眺めながら煙草の煙をゆっくりとくゆらしている牧師から、ヴァッシュはふいと視線を宙空へと戻した。 ウルフウッドの傍にいれば大丈夫。 そんな思いを感じ始めたのは、この牧師と一緒に旅をするようになってからどれくらい経ってからか。 今では、一人でこの地上をさまよっていたのも遥かな昔のことのようにさえ思えてくる。 そんな思いの欠片が心の奥底をすべり落ちるのを感じながら、ヴァッシュは視界に飛びこんできたものに一際大きく目を見開いた。 眼前にぽっかりと浮かぶ月。それはどこか失ってしまった彼女を思わせて、突然なんとも言えない郷愁がこみ上げる。 ……ああ、そうだ。僕らはあそこにいたんだよね、レム……。 「なんや、トンガリ。泣いとんのか?」 不意に見開いた視界の中、ウルフウッドが覗きこんでいるのに気がついた。 気がつくと、目の端から一筋の雫が零れ落ちていた。 「……あれ?」 「星空に感動したんか?」 センチなやっちゃなーと続けるウルフウッドに、いいやと首を振る。 「なんだか、昔のことがすっごく思い出されて、さ」 ほうか、と咥え煙草のまま頷くと、ウルフウッドも星空に視線を向けた。 「ワイもホームにおったころ、よう見上げよったなぁ。時たま、なんかみとうなる時があって……」 しんみりと語る牧師の顔が見たくなって、ヴァッシュはころりと向きを変えた。けれど、そこから見えるのはいつもの大きな背中だけ。 「センチなのは君も同じじゃないか」 わざとばしんと背中を叩いてやる。「なんやて」とやり返してくるその手を払いのけてがら空きになった体に抱き着いて……。子供のように笑ってじゃれ合いながら二人は砂の上を転げまわった。 もつれたように再び砂の上に転がると、ヴァッシュはウルフウッドにしがみつくような態勢で目を閉じた。 「僕は……昔あの星の近くにいたことがあったんだよ」 独り言めいた口調に対してウルフウッドが見つめてくるのに気がついた。顔を上げると、その訝しげななんとも言えない表情に思わず苦笑がこぼれた。 「ホンマに何モンなんや? ヴァッシュ・ザ・スタンピード?」 ウルフウッドの答えを期待しない冗談めいた口調にヴァッシュは微笑を浮かべてはぐらかす。 「さぁ、なんなんだろうね」 自分が何者かなんて。 忘れてるとこもあるけど、でも本質は知っている。 だけど、きっと教えない。 ヒミツは多いほど恋のゲームは楽しいって、言うじゃないか。 ねぇ、ウルフウッド? 心の中の呟きに思わず笑みが浮かびあがる。 「なんや。ワイの顔になんぞついてるんか?」 「……なんでもないよ」 「相変わらず、秘密の多いやっちゃなぁ」 呆れたようにまた新たな煙草をくわえる。その動きがとても自分を惹き付ける。それが悔しくて、ついと煙草を取り上げて自分の口に運んだ。ゆっくりと立ち上るケムリの中霞むウルフウッドに向かって『空っぽではない』笑顔を見せ付けてやる。 「お互いさまだろ。それに……」 「……なんや」 口の端にうっすらと笑みを浮かべ、ヴァッシュは牧師の手を擦り抜けて立ち上がった。 月を背にしたその姿は見慣れた牧師をも瞠目させる何かがあった。 「……まだヒミツだよ」 「だから、何がやいうねん?」 ヴァッシュは答えずに胸の中で独り呟いた。 ――君のことが好きだってことはね。 うう、雲丹さまスミマセン。キーワードは『しあわせな二人』……なのにこれはいったいどうしたことでしょう(笑) 所詮、未熟者の物書きということで勘弁してやってください−っ(^^; つーことで、かつての【海賊王国】のキリ番リクでした! |