〜其の壱 是運命的邂逅〜 |
それはまさしく『運命の出会い』。 ジェネオラ・ロックでヴァッシュを見失い、1年半近く『赤いコートの死神』をストーカーよろしく追っかけること早1年。そろそろ諦めた方がええんちゃうか、という心の突っ込みにそろそろ賛同多数で押しきられそうな,そんなある日のことだった。 「なかなか見つからんもんやなぁ」 新しい街に下りたって、いつものようにぷらぷらと通りを歩いていた、その時である。 「…………っっ!?!」 加速装置オン!な高速モードで、牧師はショーウィンドウにかぶりついた。 下から眺めても上から見ても,、横からくいいるように見つめても変わらない、その姿は。 「『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』やないかぁぁっ!!」 重力に逆らうかのようにまっすぐに立てられたべらぼーにキレイな金髪、目の脇のキュートな泣きボクロ、風になびくトレードマークの赤いコートの裾は、無残にも無数の弾痕が残っている。愁いを含んで伏せた目がわずかに覗くサングラス、コートの上からでも分かる細い腰、自分を抱きしめるかのように回された腕。コートからちらりと覗くあまり日に焼けてない項や指先はまるで……。(牧師ビジョンでお送りしております) 「……あ、アカン。鼻血でそうや」 久方ぶりに拝む想い人の姿に、ウルフウッドは血の登った頭を冷やすべく大きく深呼吸した。 「……落ち着け……落ち着くんや、ニコラス・D・ウルフウッド!」 一呼吸ついてウルフウッドはもういちどまじまじとその姿を眺めた。 店の中央にでんと据えられたショウウィンドウ。其のど真ん中に鎮座まします『ガレージキット』を。 「欲しぃ……、これはゲットせにゃあかん」 さらに四半刻ほどショーウィンドウの前を行きつ戻りつ、立ち止まり、そのアヤしげなオーラに通りがかりの一般ピープルをビビらせたウルフウッドは異様に真剣な眼差しできっと店を睨み付けた。 「おっちゃん、あそこにおるヴァッ……いや、人間台風人形、ワイに売ってくれへんかっっ!?」 突然に扉を蹴破るようにして入ってきた客に、顔色も変えずに親父はのたもうた。 「それは売りもんじゃねぇんだよ、牧師のあんちゃん」 そして胡散臭そうな目で店屋のオヤジがウルフウッドを見上げる。 確かに客としてもむちゃくちゃ怪しいことこの上ない。, 「そないなこと言わんといてぇなぁ、おっちゃん」 「いーや、だめだめ」 きゅっきゅっと磨いていたキットを下に置いて、親父はカウンターに身を乗り出していたウルフウッドを押しのけた。 「金ならなんぼでも出すっ! なんやったら、おっちゃんの懺悔もおまけで特別タダで聴いたるさかいに」 「……生臭牧師かい、あんた」 「なぁ、おっちゃん。あれ、ワイに譲ってくれへんか。大事にしたるよってに」 「ダメだっっつーてるだろうが」 オヤジはしつこいウルフウッドに辟易したかのように、あっさりとその由来を明かした。 「アレはうちのお得意さんがこさえたヤツでな。完成品の展示モンなんだよ」 「完成品やて?」 ぴくり。 ウルフウッドにナニカのスイッチが入った。 「おうよ」 言ってごそごそオヤジはカウンターから箱を一つとりだした。 「これが本体、ベルナルデリ保険協会調査員の検定済の正規キットだぜ」 どかり、と置かれたその中には丁寧に包まれた人形がうっすらと見えていた。そして、でかでかとベルナルデリ保険協会監修の文字が並んでいる。 「何せ、あの月の大穴ぶち開けてくれた人間台風だからな。マニアの間じゃあ,密かなブームを呼んでるってシロモンさ。 ホレ、これに色を塗って、パーツを組みゃああーゆー風に出来あがるって寸法よ」 と、手でざっと造り方を説明しながら、オヤジはショウウィンドウにあごをしゃくった。 ただ、目を爛々と光らせて箱を見つめる牧師。その姿ににやりと笑い、オヤジはもう一押しを試みた。 「ポーズも付けようによっちゃあ,結構変わると、色も好きに塗ればいい。完成は『あんたの思いのまま』ってこった」 「……お、思いのまま……」 ちゅどーんっっ ちゅどーんっっ ちゅどーんっっ 瞬間、牧師の煩悩大火山が勢いよく噴火した。 「おっちゃん、これ、1つワイにもくれ!」 「へい、まいどありィ! よし、おまけに組み立て用のボンドもつけちゃおう!」 「おおきに! おっちゃん!」 いそいそとヴァッシュ・ザ・スタンピードを胸に抱えて出ていった流浪の牧師。 彼のその行く先は誰も知らない……。 |
| FIN. |
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真人:というわけで、現在ヴァッシュのキットがウチにあります。 実際のキットの写真も公開しま〜す。 |