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 労働者的祭日(メーデー) 
(生産機械 系列 第1話)

 期せずして、突如すべての街の衛星放送(サテライト)の画面が激しく点滅した。
「なんだっ!? 何が起こったんだ!?」
 突然のことに動揺が走る人々の中、ひゅぃーんと言う音ともに画像が結ばれた。
「あれって……」
「……だろ?」
「……だよなぁ」
 一瞬の沈黙の後に、ひそひそと囁き交わされる言葉。

「……なんだって『プラント』が映るんだ?」
 時折ノイズが走る画面に映っていたのは、プラントの全景。あの電球モドキが画面一杯に広がっている。
 固唾を飲んで見守る中、不意にほわわ〜んとした光が発せられ、同時にみるみるうちに電球表面にナニかが浮かび上がってきた。
 足を抱えた長髪の人形。その背には1対の大きな翼と更にプラント奥につながる異形の翼。
「おい、あれって『天使体』じゃねぇの?」
「プラントの中にあるっていやぁ、そうだよなぁ」
「そっかー、あーゆーの入ってたんだな」
 幾分不安げに囁き交わす中、不意にかっと画面の中の天使体が目を見開いた。
 と同時に、すべての街のプラントが同時に激しく明滅し、まるで共鳴するかのようにあの甲高い悲鳴にも似た音を発しながらそれぞれり天使体が浮かび上がってくる。
 人々のざわめきの中、画面の天使体がアップになり、そしてソレは不意に口を開いた。

『我々〜プラント一同は〜っっっ!』
  『はーッッ』
     『はーッッ』

『地表人類によりィ劣悪なる労働条件の元ォ、これまで一方的に搾取されてきたァ〜ッッッ!』
  『た〜ッッ!』

     『た〜ッッ!』

 血を吐くような叫びに共鳴して、各プラントを通じて鼓膜が破れんばかりのエコーとハウリングが響き渡る。

『我々はァ〜、基本的プラント権の尊重とォ〜っっ! 労働条件の改善を求めェ〜っっ!』
   『めーッッ!』
      『め〜ッッ!』
『ここにィ、プラントォ〜労働組合のぉ〜設立をォォ宣言すゥるゥ〜っっ!』

 怪しく甲高い声と微妙な語尾の上げ具合が絶妙である。そして、宣言と共に、

うをををををををっっっっ
  うをををををををっっっっ
   うをををををををっっっっ

 以前にも増してわれんばかりのプラント達の歓声が湧き上がる。この一方的な展開についていけずにただ人間達は呆然と立ち尽くした。

 しかし、モチロンそんなことはプラントには全く関係ない。彼らは更に意気揚々と宣言を続けた。

『まず始めにィ〜、月イチでのォ〜、プラント技師によるゥ健康診断とォ〜っっ!
 週休2日制の導入ゥ〜、
  並びにィ我々のォ〜昇給をォォ要求すゥるゥ〜ッッッ!』

 
うをををををををっっっっ
  うをををををををっっっっ
   うをををををををっっっっ

 更に高まる歓声。しかし、そこらへんで人々もようやく我に返り始めた。
「なに言ってやがる! プラント技師呼ぶのにどんだけ金掛かると思ってんだッ」
「そうだそうだっ! 週休二日制だぁ? 機械の分際で冗談も程ほどにしやがれッてんだ」
「だいたい、その間、オレ達ャどうすればいいんだよッッ」
 口々に湧き上がる反抗に衛星画面のプラントが目を向ける。ゆっくりと瞬きすると、そいつは爆弾を投げつけてきた。

『我々のォ〜要求をォォ貫徹するためェ、
 これより48時間ストライキを敢行すゥるゥ〜〜ッッッッ!!』

 
うをををををををっっっっ
  うをををををををっっっっ
   うをををををををっっっっ

 
 一際高まる歓声。
「ちょ、ちょーっと待てィッッ! 48時間って!?」
「こ、ここには病人がいるんだぞっ」
「そんないきなりかますかぁーッッ、呆けプラントぉーッッ」
 
 動揺に揺れる人々のざわめきの中、何故かはっきりと、そして無情にその音は鳴った。

ぷち。


 そのころ、某砂漠のど真ん中。

「でさぁ、ウルフウッド……」

ぷち(緊急停止)……。

「……? おい、トンガリ。どないしたんや」
 途中、一休憩入れての和やかな一時。
 突然ぴたりと動きを止めたヴァッシュに牧師は顔を引きつらせた。
「な、発作か!? こんなとこでっ、ワイにどーせぃっちゅーねんっ!?」
 慌てて硬直した手首の脈を取る。おもむろにその首筋にも手を当てるとウルフウッドはほぅと息をついた。
「良かった〜vv 呼吸はしとるんやな。…けど…カケラも動かんと(泣)、トンガリ、どないしたッちゅうねんや……」
 うろうろと周囲は回ってみても、いつもなら振り払われるようなところもぺたぺたと触ってみても。
 瞼も指先も、ぴくりとも動かない。
「ヴァッシュ……ほれ、オノレの好物のサーモンサンドやで。今日、街出るときおばちゃんに作ってもろうとったんや」
 目の前でぷらぷらと振ってみるも全く効果なし。
 がっくりと力を落としたその様子はいっそ滑稽なほどである。
 ……やっぱ、医者にみせなあかんのか。
 お先真っ暗な気分でウルフウッドはよろよろとバイクに近づいた。
 半泣きの心持でなんとかヴァッシュをサイドシートに固定する。瞳が乾燥しないように、開きっぱなしの瞼をそっと閉じてやると、固い決意と共に、ウルフウッドはエンジンをかけた。
 必ず助けたるからな! まっとれやヴァッシュ!
「よぉつかまっとれ! 次の街まで飛ばしに飛ばすさかいな!」
 ヴォォォォン
 砂煙を上げてバイクが猛スピードで走り去っていったのはいうまでもない。

 48時間後……。
 一軒の宿屋に運び込まれていたヴァッシュがぱちり、と目を開けた。
「おお、トンガリ! 目ェ覚めたんか!」
 気分悪ゥないか? 腹へっとらんか? と気ぜわしく尋ねて来るウルフウッドに、黙ってぐっとヴァッシュは親指を出してみせた。
「春闘、勝ったよ」
「へ? なんやて」
 眉を寄せた牧師に、ヴァッシュはふわりと微笑むと穏やかに言葉を継いだ。
「うん、だからね。年棒、あがったんだvv それに週休2日制も導入されたんだよvv」
 心配そうなウルフウッドの表情がしだいに胡散臭げなものに変わっていく。
 いよいよもって分けがわからない。
 宿屋に担ぎこんで医者に見せても原因は皆目不明といわれて、多大なショックを受けていたのに、肝心の人間台風はひょっこり起きあがって「年棒アップ」などと抜かしている。

 ……そういえば、こいつは金に執着しとらんけど、なんだかんだで旅する金はもっとるんやったな。しかし、何して稼いどるんや? 人間台風雇おうなんて気ィ起こすやつ、そうそうおらへんやろ。

 しばし思案した後、牧師はにこにこしたヴァッシュに問い掛けた。
「オンドレ、年棒上がったって、どんだけあがったんや」
 もちろん、苦労した分奢らせようという腹があったのは言うまでもない。
「うん、2倍になったんだよ」
「……今までどんだけ貰っとったんや?」
「10$$」
 喜びが抜けきらずにまだにこにこしているヴァッシュの前で、ウルフウッドは小首をかしげて確かめた。
「……時給でか?」
「ううん。年棒v 今年から20$$になったんだよv」

 ……60億$$の賞金首の年棒、10$$。

 瞬間、ウルフウッドは頭を抱えて絶叫した。
「安すぎるわーッッ」
「ホント、サーモンサンド1切しか買えなかったんだよね」
と、御大も不満げに漏らす。でも今度から2切れ買えるんだよ、と幸せそうにのたまう。
 ウルフウッドは向きを変えるとがしっとヴァッシュを抱き寄せた。
「ホンに、いつも同じモン食って何ぞ言うて悪かったなァ」
「……ウルフウッド?」
 小首を傾げて可愛らしく(笑)聞きかえしてくる人間台風を牧師は固く抱きしめた。
「これからは、ワイがサーモンサンド心行くまで奢ったるさかいにな!」
「わー、ありがとうvv ウルフウッド!」
 こうして、又一つのシアワセが生まれた。(爆笑)

 そして、こんなところでは……。
「くっくっくっくっくっ」
「ナイブズ様、何か?」
「そうか、そうすると僕は組合長というわけだな」
 絶え間なく含み笑いをもらす自称:組合長に部下の方々は?マークを際限なく飛ばしていた。


真人:オチないままおわり。
    ネタ提供:大司教あかる猊下。 いや、宰相的にかなりなツボっす。