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オ ア イ ソ
「お? あのねェちゃんたち、どこ行きおったんや?」
 食堂で朝ゴハンをぱくつくヴァッシュの前にウルフウッドの影が落ちた。
 もぎゅもぎゅと飲み込みながら、
「ん〜? ああ、保険屋さんたちのね、支部がこの街にあるから行ってきますって言ってた」
「なんや。ワイがせっかく奢ったろおもたのにな」
「なんか良いことでもあったのかい、ウルフウッド?」
 返事を待たずに、ヴァッシュは次のサーモンサンドに手を伸ばした。
「保険屋さんたち、きっと喜ぶだろうな。ちょっと待ってたら? すぐ戻ってくるっていってたし」
「そやな。ほな、待たせてもらおか」
 椅子を引いて正面に座る。鼻歌でも歌い出しそうなその様子に、ヴァッシュはにこにこしながら眺めていた。
「なんだ。僕には奢ってくれないの?」
「奢ってほしぃんか?」
 にまり、と笑みが深くなる。いつものことながら裏があるような物言いをすると思いながら、ヴァッシュはくつくつと笑った。
「ダメ?」
「タダっちゅうんはワイの主義に反しとるんやがな」
「でも保険屋さんたちはいいんだろ?」
「あたりまえや。女性は大切にせなあかんやろ〜」
 牧師は大袈裟に身振りを付けて言い放った。そのあっけらかんとした物言いが少し癪に障って、冗談半分にぺしっと側のナプキンを投げつけた。
「ちょお、待てや」
 へらへら笑いながらあっさりとかわされたナプキンはひらひらとテーブルの下に舞い落ちた。
「ほれ、くっついとるで」
 すっと伸びた手が頬に触れた。
 触れられてぴくり、とした顔のラインにゆっくりと指が滑り落ちる。
 唇の端をその指が掠めるところで、ヴァッシュはすっと瞼を閉じた。
 くくっと喉の奥で笑ってたちあがると、ウルフウッドはヴァッシュの腕を取った。
「ほな、第2ラウンド行ってみよか?」
 くぃと親指で奥の部屋を指す。
「……キミも飽きないねぇ」
「オンドレが相手なら退屈せんで済みそうやからな」
「やれやれ」
「ええやん。おもろいことは好きやろ?」
 黒い眼差しに覗きこまれて、ただもう降参する。勝てるわけがない。
 もう、こうなることはずっと前から分かってた。
 だから。
「ねぇ、ウルフウッド……」
「なんや」
 ヴァッシュはその手を自然にウルフウッドのそれに重ね合わせて。そして、ふっと笑って手を引いた。
 くるりと背を向けて部屋への階段に向かう。
「先行ってるね」
「……っ! 待たんかいっ、このアホンダラっ」
 振り向いた先には、手をひらひら振って消えていく赤いコート。 
 開かれた手にはレシートがしっかり押し付けられていた。既に階段の奥へと消えた姿を眺めて舌打ちする。
「ったくしゃーないな。まぁ、ええわ」
 ウルフウッドは小銭をポケットから引きずり出しながら呟いた。
「徴収すれば済む話や。方法はどんなんでも、かまわへんしな」




真人:WV萌え未満。宰相の書くのはみんな「ニセ萌え」ってかんじっす。
……ふっ……とりあえずダーッシュっっ……(逃走)